昨年、自動車事故を起こしてしまいました。右折時に直進車と衝突です。
事故に関わると、双方の保険会社といろんな交渉事をお話ししなければなりません。その際、保険会社が何を言っているかを理解し交渉を有利に進めるのに大変役立つ本です。
東京地裁民事交通訴訟研究会 判例タイムズ 2014
過失割合って何さ?
事故を起こしたりあったりすると、損害が出ます。事故後はその損害を過失の度合いに応じて、それぞれが負担することになります。この過失の度合いを「過失割合」と言います。
A車とB車が事故を起こし過失割合が70:30だったとします。A車に40万、B車に100万の損害があった場合、「過失割合」に従ってA車の負担額は 140万 x 70% = 98万で、B車は 140万 x 30% = 42万となります。
過失割合は保険会社が決める
わたしは、てっきりこういうのは警察が調書などから決めるものだとばかり思っていました。ところは、警察には「民事不介入」という原則があります。つまり、損害の負担額を決めるための「過失割合」なので、これは民事ごとなのです。警察がやってくれるのは、人身事故でなければ「供述調書」や「実況見分調書」を作成し、後で「交通事故証明書」発行してくれる程度です。
では、誰が決めるかというと、それぞれの当事者同士で決めなければなりません。
ところが、通常事故に関してはみんな素人ですし、ほとんどの方が任意保険に入っており示談交渉もオプションで付いていますで、当事者に変わって保険会社が話あって決めることになります。
保険会社は過失割合をどう決める?
保険に入っていた場合は相互の保険会社から支払われることになりますので、保険会社にとっても過失割合は重要です。多くの場合、保険会社同士の利害は衝突しますから、何の基準もなく主張し合えば折り合いがつかないことは目に見えています。そこで、保険会社が基準としているが過去の判例です。そうはいっても全ての保険担当員が過去の判例を覚えるのは不可能です。で、簡易的に参照されるのが、この「判例タイムズ」です。つまり、保険会社の過失割合の基準はこの「判例タイムズ」なのです。
この判例タイムズには、自動車事故に関する詳細なケース事細かに分類され、以下のような図解入りでたくさん掲載されています。
わたしは、事故の当事者もいち早くこの本を手に入れて自分のケースについて調べておくことをお勧めします。
なんで保険会社任せではいけないの?
保険会社同士で交渉してくれるのに、なぜこの判例タイムズを当事者が読む必要があるのでしょうか?
事故にあった、あるは事故を起こした時、相手の保険会社は少しでもこちらの過失割合を大きくするような交渉をしてくるはずです。また、自分の保険会社は基本的には味方のはずですが、妙に強気の交渉をしてこちらの過失割合を小さく見てその結果示談の長期化を招くことがあります。また、示談を引き出すためにこちらの過失割合を大きくする場合もありますので、安心はできません。
保険会社が言ってくる過失割合とその判断基準をよく聞いて、判例タイムズと読み比べて納得できる適正な割合かよく確かめてみましょう。なんなら、判例タイムズの何ページのケースで判断しているのか直接聞いてしまえば話が早いと思います。この判例タイムズがあれば、見ての通り一つ一つは素人でも理解できるような記述になっています。
わたしの場合でいうと、判例タイムズを一通り確認していたことで、相手の方とお見舞いの際判例から見た客観的なケースとして冷静にお話をさせていただくことがお互いにできたように思います。結果、合意に至るのもスムーズでしたし、保険会社の想定や思惑もよくわかり対応することができたように思います。
多少高い本ですが、事故に関わった際には是非一冊! わたしはデジタル版をその日に買いました。
番外編:事故にあったら
事故の経験から、事故にあった場合のアドバイスです。
気が動転していると思いますが、落ち着いて対応しましょう。
- まずは人命救助と安全確保
けが人への対応や自分たちの安全確保が一番です。状況によってはすぐに救急車を。
- 警察への届け出
保険の利用でも必要になりますので、警察への届け出は素早く
- 保険会社への連絡
- 忘れずに
- 状況の保存
警察の到着まで時間があるはずです。自分なりに事故の状況を整理しましょう。特に道路や交差点の様子、各タイミングでの信号の状況、自分と相手の車速、位置関係などです。どうせ警察にも同じことを話さなければなりません。意外に時間が経つと曖昧になってきますから、メモを残しましょう。写真に残せるものは自分でもスマホで写真に残しましょう、もっとも客観的なエビデンスとなります。
特に「状況の保存」については、できれば一度判例タイムズに目を通しておくと、記録すべきポイントがよくわかると思います。例えば、交差点への信号のタイミングで驚くほど比率が変わったりします。
以上のことが終わったら、静かに警察などの到着を待ちましょう。指示に従っていれば大丈夫です。
相手が怪我をしている場合
相手の方が怪我していたり、入院となるケースもあるかと思います。
可能であれば、その日のうちにお見舞いに行きましょう。直接相手に自宅や見舞い先がわからない場合もあると思います。その場合警察に確認しましょう。相手が怪我をしている場合には、人身事故となる可能性が高いので警察の方から後日事情聴取や現場検証が必要なため連絡先をいただくことになると思います。そこに担当警察官の名前もあるので、電話で連絡して「お見舞いに行きたいので連絡先を教えてくれ」というと大抵相手の同意をとって教えてくれます。
そのあとは、できる限りお見舞いには参りましょう。
わたしの場合は、当日、2日後、その後は週末に数回病院にお見舞いに行きました。当日はお花を、2回目は菓子折りを、毎週末はフルーツを持って行きました。現金はご法度です。基本的に賠償などお金の話は「保険会社に任せてあるので」と話を止めましょう。
基本的に示談交渉は保険会社任せになりますから、見舞い不要という方もいらっしゃいます。場合によっては相手が感情的に高ぶっていて、あらぬ罵倒を浴びせられる場合もあるかと思います。しかし、やはり人として相手の方が心配ですし最低限のことだと思います。
当日奥様ともお話でき謝罪させていただいたので書きませんでしたが、詫状も必要に応じて書いた方がよいかと思います。ちなみに当初の保険会社が判断した過失割合は、相手が6割、わたしが4割です。相手に怪我をさせた謝罪の気持ちをあわらしておくことと、過失を認めることは別のことです。
やらしい話をすると、人身事故になった場合、相手の心証をよくしておくことで行政処分や刑事処分の重さに影響しますし、何より警察自体も見舞いの状況などを聞くようなので多少影響するようです。どの程度の頻度で何を持っていたかなども記録するとよいようです。
わたしの場合は、いろいろ納得いただいて診断書の提出しないと言っていただけて大変助かりました。