書評:「コルトM1851残月」
あらすじ
「侍でもなきゃ、やくざでもない。江戸のアウトロー“残月の郎次”は、その特異 な得物で己の立つ瀬を切り拓く。」と帯で紹介されているように、時代は江戸時代、 抜け荷稼業を仕切る番頭が主人公です。
誰にも知られることなく手にしているリボルバー式のコルトで裏仕事をこなし、存在感 を増していきます。
ところが、一人の強欲な女を殺めたところから、組織でのポジションを失うだけでなく 命さえ危ない立場に追い込まれます。そんな状況をコルト一丁を頼りに、主人公は ギリギリの勝負をかけて行きます。
読了感
正直、善人でもなく、寧ろ誰にも知られず淡々と裏稼業のために準備万端で コルトで淡々と密かに人を殺めて行きます。当時の最新鋭の銃を手に、 仲間や子分にすら「秘密の筋」に暗殺を依頼していると思わせ、圧倒的な優位 を保持している主人公ですから、なんとも感情移入しにづらいです。
ところが、そんな圧倒的な力を持っていたはずの主人公があっという間に追い込まれ 、そんな中いかに最新鋭のコルトを活用して窮地を脱するか知力を尽くす 展開からどんどん引き込まれて行きます。
「残月」- 朝方に残る月 という主人公のなかなかに意味深いものがあります。
コルトM1851について
主人公が持つ、コルトM1851は1851年にコルト社が発売した、パーカッション式 シングルアクションリボルバーと呼ばれる雷管と球形弾を用いる36口径の拳銃です。 シリンダーにテキサス海軍の勝利の場面が描かれているため、「ネイビー」と 呼ばれていたようです。
非常に軽量でホルスターでの携帯を考慮されて設計されていたため、西武の植民 化を進めた時代にマッチして非常に売れたようです。銃としてもオープントップ フレームのリボルバーとしては完成形で性能もよかったようです。
クリント・イーストウッドが映画で使ったことでも有名です。
そういえば、映画化された「キャプテン・ハーロック」で彼が持っていた戦士の銃 は、コルトM1851がモチーフになっていました。
こういった実在の拳銃を緻密に描ききっている作者 月村 了衛さんのガジェットへの こだわりがよくわかります。