読了『Winny 天才プログラマー金子勇との7年半』
暇つぶしに読んでみた『Winny 天才プログラマー金子勇との7年半』を読んでみました。
事件当時リアルタイムに金子氏が2ちゃんねるで「47氏」と呼ばれ開発を始めてWinnyが広まっていく様をみていたし、実際自分でも使ってました。
京都府警察ハイテク犯罪対策室がWinnyでゲームソフトのデータを公開したアホを逮捕したのちのWinnyの開発者である金子氏を逮捕にした時、正直「はぁ? また警察が頓珍漢なことを」という印象でした。 直前に Antinny.Gというウィルスが京都府警の交番勤務の巡査のパソコンにも感染し、個人情報を含んだ捜査書類をウィニーネットワーク上に流出させるという大失態を演じさせたばかりだったので、「この報復だよね。だとしてもアプリの開発で著作権侵害の幇助は論理が飛びすぎだよな」と思ったものです。
しかし、検察は金子氏を起訴し、一審の京都地裁は金子氏を有罪としました。日本の司法の無能さに絶望したものです。このニュースはメディアも賑わし、P2PやWinny自体が有害ソフトウェアであるかのような印象を世間に与えました。私の勤務するIT会社でもこれらの使用は禁止されました。世界的にも開発者が幇助を問われて有罪となった例は、この事件しかないのではないでしょうか。
Winnyの使用していたP2P技術やキャッシュ技術は、現在はインターネットやクラウドでは必須の技術となり多くはビジネスで活用されてます。デジタルの著作物をネットで流通させることも当たり前になりました。残念あがらそこに日本発の技術はありません。逮捕当時金子氏は管理者がデジタル認証をつけて各ノードに特定ファイルの削除を強制するような、セキュアに著作権を保護しながらファイルを共有する仕組みも構想していたようですが、事件によって実装されることはありませんでした。
2011年に最高裁が検察の上告を棄却し金子氏の無罪が確定しましたが、7年以上の期間を費やしています。無罪確定の1年半のちに金子氏は心筋梗塞で亡くなっています。
この本は当時のいち早く金子氏の弁護を引き受けた壇俊光氏による執筆で、最も事件と その裁判の当事者に近い位置で見ていた弁護士の方の目線で語られています。 弁護方針の立て方とか、戦術の選定などもう少し生々しいものを期待していたのですが、 著者も述べているように当時のブログを元にした小説です。それでも一連の経緯はよくわかります。
ISBN-13: | 978-4844378624 |
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ISBN-10: | 4844378627 |
「Winny事件」弁護団の事務局長を務めた壇俊光氏が自身のブログを元に小説としてまとめたものです。日本のインターネット技術の発展に負の影響を残したと言われる裁判の経緯を追いながら、壇弁護士が見た金子氏の人物像、Winnyの核心を語ります。