書評:Gene Mapper - core -
早川書房からきちんと編集を経た『Gene Mapper -full build- 』も発表されているが、今回読んだのはセルフ・パブリッシュ版の『Gene Mapper -core- (ジーン・マッパー コア) 』の方です。
フルスクラッチで新しい種のデザインも可能になった遺伝子工学、インターネット崩壊後に出来た新しいネットとアンダーグランドのネット社会、アバターを通してバーチャルなコミュニケーションを行う社会、そしてアジア……題材だけ並べても面白くないはずないというセンスのよさで、最近読んだ小説の中では群を抜いて面白かったです。
この本はセルフ・パブリッシュという形で世に出されています。執筆者が編集や出版社を経ずに直接出版する形態ですが、PDFや電子書籍が一般化し始めたのでこちらも現実的になってきました。わたしはKindle版を購入しましたが、AmazonもAmazonダイレクト出版としてサービスを始めたため急速にこの手の本が増えているようです。
作家を目指す方にとっては非常に安価に出版できるため、今まで出版社に認められないと作家になれなかったこの業界ですが新しいアプローチも可能になっています。実際この作者の藤井太洋はKindle以外にも多くのフォーマットで出版されており、オフィシャルサイトも自身で立ち上げマーケティングまでこなされています。
文体や小説のテンポもおそらく電子書籍のフォーマットを意識したものになっており、「本」であればストーリーが飛躍しすぎと感じる飛ばし方ですがKindleで読んでいるとこれくらいスピード感あったほうがよいように思います。この著者はKindle連載で別のシリーズも始めているので、早速購読です。また、次は『Gene Mapper -full build- 』の方も読んでみようと思います。