Aria Pro II PE-1500RIレビュー:時を超えた美しさ
Aria PRO II PE-1500RI を購入しました。
以前に入手したYAMAHA SG-Iを気に入っているのですが、やはり古いギターで気を使います。 最近のSG-Iの中古価格高騰もあり、自分の手元でダメにしたくないという気持ちから手放す ことにしました。
代替として同様のハムバッカーのギターを求めて、手に入れたのがAria Pro II PE-1500RIです。
Aria Pro II PE-1500とは
PE-1500は1977年にAria Pro II(荒井貿易)初のオリジナルギターとしてモデルです。
当時は日本ではGibsonやFenderのコピーモデルが主流で荒井貿易でも同様した。 1970年代のGibsonやFenderの没落と当時の日本のギターの品質の高さから輸出が好調でした。 その勢いに乗って企画された初のオリジナルギターが、PE-1500です。
林信秋氏(当時生産を担当していたマツモク工業) が設計・製作し、レスポールシェイプながら曲面が多用されたクラシカルと モダンが融合したような独特のデザインが採用されました。 当時の国産ギターでは群を抜いた美しいギターでした。
恐らく私が最初にギターを買おうと思ったときに、 カタログで見た最上位機種がPE-1500だったと思います。 当時はこれからギターを始める子供には高価なモデルで、手が届きませんでした。
PE-1500の独自性
当時オリジナルモデルの指向が強かったようで、一見レスポールですが次のような オリジナリティーを持ったモデルでした。
ボディシェイプ
レスポール同様アーチトップを持つギターですが、レスポールよりアーチがダイナミックなシェイプとなっています。 スイッチ類の部分は丁寧に落とし込まれ、ノブにはローズウッドっぽいトップが貼り付 けてあり、その上品さと高級感はレスポールを凌いでいます。
また、レスポールにはない特長としてトップ面だけでなくボトム面にもアーチバックが 施されています。特にアーチバックは裏ぶたまで木製で削り出しており、木目を生かし たブラウンの塗装と相まってバイオリンのような雰囲気です。デザインだけでなく演奏 時のフィット感も向上しています。
ヒールレスカッタウェイ
PE-1500はレスポール同様ネックとボディはセットネックですが、 ネックジョイント部がカットされた「ヒールレス」加工がなされています。 一見スルーネックかと見まがうほど、滑らかにカットされています。
通常のレスポールと比較すると、ジョイント部の出っ張りがカットされているため ハイポジションでの演奏時にフレットへのアクセスが格段に容易です。
ストラトキャスターの影響
PE-1500は外見はレスポールですが、ストラトキャスターに近い648mmスケールが 採用されています。
ブリッジもレスポールのようにブリッジとテールピースが分かれておらず、 一体型の「スーパーマチック・ブリッジ」というオリジナルのブリッジが搭載されています。 パテント問題の回避なのか、何かの効果を狙ったものかわかりませんが、 構造的にもFenderのギターに似ています。
また、コントロールノブも1ボリューム/1トーンで、ボリュームノブはピックアップに 近い位置にあり、ストラトキャスターのように演奏時にボリューム操作がしやすい構造と なっています。
ピックアップにDIMARZIOのSuper Distortion
ピックアップにはリプレイスメント・ピックアップの代名詞とも言われる 超定番のSuper Distortionが搭載されています。 2023年で50周年を迎えるロングセラーモデルです。
濃密な歪みを得るため、強力なセラミック磁石や細いワイヤーで巻数を増やした ボビンなどの工夫がなされています。
PAFなど標準的なハムバッカーのピックアップの場合は出力が250mwですが、 Super Distortionは425mwと実際にも大出力です。
ハイゲイン系のモデルでディストーションでリードを奏でるのに最適です。
チューブアンプ直結でフルテンで鳴らせば、エフェクターなしで1980年代の 王道的なハードロックなディストーションサウンドを得ることができます。
PE-Rシリーズへ
PE-1500はその洗練されたデザイン故に、製造コストを押し上げ価格が高く なってしまい、PE-1000,PE-800などのスペックを下げたモデルも発売されました。 レスポールが$1,000だったところに、PE-1500の販売価格は$1,500だったそうです。
メイプルのボディの重さからプレイヤーからも支持が得られず、思うように売れなかったようです。
1979年には不景気と円高で売上が低迷し、収益改善のため仏壇まで製造していたそうです。
ギターのモデルも多角化が図られ、PEはPE-Rシリーズに主役が引き継がれました。
後続のPE-R80/100では、アーチトップ&アーチバックやヒールレスカッタウェイの ボディは引き継がれたもののメイプル/マホガニー/メイプルの3層構造となりました。
またブリッジはレスポールに近いブリッジとテールピースに分割されたものに改められました。
ピックアップはSuper Distortionに替えて、オリジナルのClass Powerに置換されています。 スイッチ類もレスポールに準じて、2ボリューム/2トーンとなりました。
一部の独自性は維持されていますが、オリジナルを目指したPE-1500とはちょっと方向性が 変わってしまいました。
PE-1500RI(復刻モデル)とは
今回購入したモデルは、2013年から販売されているPE-1500の復刻モデルです。
1970年代の初期モデルに準じて、DIMARZIOのSuper Distortion、スーパーマチック・ブリッジ、ヒールレスカッタウェイなどPE-1500の特徴的な仕様が再現されています。
ボディ材も初期モデルに同様オールメイプルですが、軽量化のためかチャンバー加工(空洞)が なされているようです。と言っても4Kgを下ることはないと思いますが。
PE-1500RIを弾いてみた
取り急ぎ弾いてみました。
レスポールタイプと言えば、この曲です。
よく考えると、この曲はでないほうがよかったか。
この曲でEric Claptonがレスポール "Lucy"を使っていることは確かですが、 ADTか何かでフランジングのような加工がされています。曲の雰囲気を出すために、つい同じようなエフェクトを加えてしまいました。
まとめ
Aria Pro IIと言えば、入門者向けギターモデルを乱発している印象があり、 ある時期からあまり購入対象のブランドではなくなってしまいましたが、 フラッグシップと言えるPEシリーズはクオリティを保っています。
恐らく、 福山雅治、渡辺香津美、 松原正樹、ニール・ショーンなど有名アーチストの愛用者も多い 後継モデルのPE-R80/100のほうがメジャーだと思います。
しかし、Aria ProIIのモデルラインナップを見ると、 限定モデルを除くとPE-1500が価格は最も高くフラッグシップ中のフラッグシップです。
とにかく、眺めているだけでもずっと見ていたい美しいギターですが、 弾いても気持ちのよいギターです。
冷静なレビューは後日に。