安倍元首相殺害事件に思う

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カテゴリー:  Trivialities タグ:  current affairs
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安倍元首相が奈良遊説中に銃撃され殺害されるという事件が7月8日に発生しました。

元首相の遊説中の事件ということで騒然としましたが、政治的な目的でなく個人的な逆恨みからの反抗と報道されてます。 いろんな憶測がネットでも飛び交っていますが、思うところを書いてみたいと思います。

問題の宗教団体について

銃撃を行ったとされる容疑者は、母親が宗教団体に破産させられて 安倍元総理がその宗教団体のトップであると認識して殺害に及んだと供述していると報道されています

この宗教団体について特定して報道されていないため、ネットではいろいろな憶測が飛び交っています。

中でも多いのは、この宗教団体が「統一教会である」という噂です。 根拠は、以下のような点からのようです。

  • 1986年に創設された統一教会系の「国際勝共連合」という保守系政治団体が、自民党保守系議員と関係が深く安倍氏も以前よりネットでも取り沙汰されていた。

  • 日本共産党の機関誌「赤旗」でも、2021年9月に「統一教会系の天宙和連合(UPF)の集会に安倍元首相がオンラインで出席し”今日に至るまでUPFとともに世界各地の紛争の解決、とりわけ朝鮮半島の平和的統一に向けて努力されてきた韓鶴子総裁をはじめ、皆様に敬意を評します”と発言した」などと報じられている。

  • 6月26日のNHK『日曜討論』にNHK党の黒川敦彦幹事長が出演し、「去年、自民党の元総理大臣の安倍晋三氏が統一教会の集会に参加していて、ネットで大炎上していた。後継者である高市早苗氏も関与していた」と語り、「アベノセイダ~♪アベノセイダ~♪アベノセイダ~♪こんな国になったのは~おじいちゃんの代からCIA♪」と熱唱。

黒川氏の支離滅裂な話はネットで拾ってきた程度のものでしょうし、この放映をみて容疑者が思いついたというのは今出ている証言と時系列的に整合しません。が、統一教会が保守系議員と関係を持ってきたのは事実っぽいので、もしかするとこういったネットでの噂をみて容疑者がそういった考えに至ったのかもしれません。

「5ちゃんねる」の「NHK内部告白者 立花孝志ひとり放送局(株) Part613」スレで事件当日の朝7時19分ごろに 以下のような書き込みがあったようです。

本日金曜日、某所でまあまあ大きな出来事が起きる
そのことが、特定の党にとって大きな追い風となる
追い風は弱まることなく投開票日に突入するるるる

そんな夢をみた

容疑者の書き込みか特定されていないようですが、これを持って「実は政治的な陰謀で黒幕は自民党だ」という説もネットでは見かけます。

一番の問題は、なぜ容疑者が証言している宗教団体が警察発表で明らかにされず、報道でもその点について特定するような動きがないかです。 3年しか勤務がない容疑者の自衛隊への入隊はすぐさま報道される一方、 直接の動機と証言されている宗教団体が伏せられたまま、 報道も腫れ物を触るように特定しないのは問題ではないでしょうか?

だから、無関係の宗教団体にあらぬ憶測が飛んだり、陰謀説など無茶苦茶な噂が広まるのだと思います。

(2022/07/11追記)

11日に世界平和統一家庭連合(旧・統一教会)が記者会見を開き、以下のことを発表したようです。

  • 容疑者の母親が信者であったことは事実である。

  • 母親が破綻していたことは認知していた。献金については20年近く前のことで記録がない。捜査協力は行っていく。

  • 母親は把握できる限りでは2ヶ月前に教会の企画に参加している。

  • 友好団体が主催する行事に安倍元総理がメッセージを送ったことは事実。元総理が会員や顧問として登録されたことはない。

会見を開いた理由は、やはり警察が明確な発表をしないため憶測で嫌がらせの電話などが増え教会員の安全への危惧からとのことです。

警備の警察は無能だったのか

銃撃の映像を見ると2発射撃がありましたが、射撃の間安倍氏を庇う警備の姿は見えず安倍氏は発砲音が した方を振り返り棒立ちしているように見えます。映画で見るように多くの国であれば、 発砲音がした段階でSPが要人に覆いかぶさり姿勢を低くさせ、 2発目を発砲している犯人を発見したら問答無用で射殺を試みるでしょう。

また、容疑者が1時間近くも近隣を彷徨いていたと報道されており、 銃撃も5メートルという近距離からのものだったとの報道もあります。 現場で警備にあたっていた複数の警察官が「1発目の銃声が聞こえて初めて不審者を認識した」という内容の説明をしていることも報道されており、批判の的となっています。 確かに遊説しているトランプ元大統領に背後から5Mの距離近づくことが容易ではないだろうと考えるのが世界の常識でしょう。 奈良県警察本部の鬼塚友章本部長も「警護、警備に関する問題があったことは否定できない」と述べ、警察OBからも 「警察の失態である」との声も出ているようです。

確かに有能とは言えません。

この事件について

日本でも政治家の暗殺は繰り返されてきました。主義主張の違いから、敵対する政治家を暗殺するという事件は右左問わず近年でも発生しています。

しかし、今回の事件は近年日本でよく見るタイプの犯罪のようです。そう、2019年の京都のアニメ制作会社の事件や、2008年に秋葉原での事件のように、目立たず孤独に暮らしてきた男が恨みを募らせある日突然暴力に及ぶという類の犯罪です。 こういった犯罪のターゲットに無差別な人や特定の団体だけでなく、政治家もターゲットになりうるということを世に知らしめた点でこの事件は日本の在り方を変えるかもしれません。

そして、これまで日本では「銃」というのは身近なものではありませんでした。

一般人では犯罪歴がチェックされ講習を受け精神科医の診断書を提出し警察による近隣住民へ聞き込みも含めた身辺調査により、やっと銃を持つことが許されます。 それにしても許されるのは猟銃や競技用の銃に限られ、都会でピストル所持の申請を出してもまず申請はパスしないでしょう。 日本には世界に名高いヤクザがいますが、彼らですら銃の違法保持の罰則があまりに厳しいため積極的に銃を使うことは稀です。

実際、銃による年間死亡件数は10件以下で推移しています。警護に当たっていた警察が、銃撃を想定せずドスを持って突撃してくるようなイカレポンチしか警戒してなかったのも無理からぬことに思えます。

今回使われたのは金属パイプを粘着テープでぐるぐる巻きにしたような手製の銃だったようです。 自衛官経験者とは言え3年しか勤務経験がない者が、寄せ集めの部品で実際に威力のある銃を作り銃撃を成功できてしまうことを証明してしまったのです。 現在はネット上にそういった武器の設計情報は多く存在するでしょうし、なんなら3Dプリンターに出力するだけで銃ができてしまうデータが公開されているかもしれません。

この日を境に、ある日隣の物静かな男が銃を作り出し犯行に及ぶ可能性を考えなければならない国に変わっていく気がします。

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