ND型ロードスターのパッケージングについての考察

カテゴリー:  Automotive タグ:  mazda roadster
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ND型ロードスターのパッケージングについて素人ながら考察してみました。

ホイールベースとトレッドの比率について

新車購入したばかりですが、トヨタ スープラの プレスリリース を眺めていて、気になる文章を見つけました。

ホイールベースとトレッドの比(以下、W/T比)は1.55*1。他の量産スポーツカーと比較してもトップレベルの小さい数値を達成し、優れた回頭性に寄与

この比率が1に近いほど機動性(回頭性)が高く、 2に近いほど安定性(直進性)を重視したハンドリングになると言われているそうです。スープラの 開発責任者は、1.55がスポーツカーとしての黄金比と語っているようです。

いろんな車で調べてみると、普通の市販車はW/T比が1.7〜1.8あたりにあるようです。 1.6を分岐点として、これを切るクルマは極端に少なくなります。参考までにスポーティな 車について、この比率を一覧にしてみました。

ホイールベース/トレッド比

車種

ホイールベース

トレッド

比率

ポルシェカレラ

2450

1589

1.54

ロードスターRF

2310

1495

1.55

スープラ

2470

1595

1.55

ロードスター(NC)

2330

1490

1.56

フェラーリ488GTB

2650

1679

1.58

ロータス・エリーゼ2

2300

1455

1.58

ロードスター(NB)

2265

1405

1.61

ロードスター(NA)

2265

1405

1.61

ケイマン

2475

1515

1.63

フェアレディZ

2550

1550

1.65

86/BRZ

2570

1520

1.69

WRXSTI

2650

1530

1.73

GT-R

2780

1590

1.75

確かにロータス・エリーゼでかろうじて1.6を切っていて、それ以下には本当のスポーツカーしかいませんね。

察するに、この比率を実現するには後部座席があるセダンタイプでは難しく、 2シートのクーペでしか実現できない比率なのではないでしょうか。 2シートが条件となると、ほとんどピュアなスポーツカーしか残らないでしょう。

そうしたシートや積載姓を犠牲にした車はそもそも数を売るのが難しくなります。 確かにポルシェやロータスなどスポーツカーという領域で勝負しているメーカーは ピュアなスポーツカーであることが価値なのでこのW/T比の車が多くなります。 しかし、一般的な大量生産メーカーがこのような比率のディメンションを持つ車を 専用設計設計すること自体が難しいということがわかります。

そう考えると、大量生産をしているメーカーでこのW/T比を実現している2台、 現代の技術でライトウェイトスポーツの復権を目指したマツダ・ロードスターと 直6FRのピュアスポーツの復活を目指したトヨタ・スープラは異例中の異例なのでしょう。

比率1.55の意味

表を見ても「W/T比 1.55」は、かなり極端な数字なのがわかります。

この比率はよく曲がることには寄与するでしょうが、 トレッドに対して相対的にホイールベースが短いために、 神経質で直進安定性が足りないという車なのでは? という不安があります。

スープラに関しては同じ不安はトヨタ本社も感じたらしく、 チーフエンジニアに対して十分な直進安定性の確認を指示したそうです。 スープラでは電子制御のデフで細かい補正をかけることで直進安定性を確保しているようですが、 検証用に試作車を用いたテストでもってやっとトヨタ車内で承認されたとか。

歴代のロードスターを見てみると、以下の2つグループに分類できます。

  1. W/T比 1.61のNA型とNB型

  2. W/T比 1.55前後のNC型とND型

NC型から更に機動性にW/T比を振っているのがわかります。

W/T比 1.61のNA型とNB型でさえ、ハンドリングが軽快で「人馬一体」と言われたマシンでした。 リアが軽くすぐにリアが流れ出して、簡単にテールスライドを体験できました。

対して、NC型はリアが軽くテールが流れやすいのはNA/NB型と同じ傾向ですが、 テールスライドがちょっと怖いと感じるくらいナーバスな印象はありました。 もしかすると、W/T比がNA/NB型に比べて小さくなり機動性が上がっていたのが 要因だったかもしれません。

ND型もNA/NB型に対してW/T比が小さくなっており、機動性は更に上がっているはずです。 ところが乗ってみると、明らかにリアのセッティングが変ってスタビリティ重視に なっている印象です。軽快感はしっかりあるのですが、 NC型までは車自体が自転するような動きだったのに対して、しっかりリアは粘って スリップアングルで回っていくという印象です。VDCを切っても挙動は同じなので、 セッティングなのでしょうか。

「人馬一体」と口にするNA/NB型からロードスターを乗り継いでいる人には、 ND型はロードスターの美点を失ったと感じる方もいるかもしれません。

ND型ではパッケージングが変っている

旋回の印象が違うのはそもそもND型では、 パッケージングがこれまでのロードスターと大きく違うことも大きく影響しているでしょう。

NA〜NC型のロードスターは、着座位置がホイールベースの中心に位置していました。

これに対して、はっきりと着座位置が後輪側に寄っています。

マツダの資料を見ると、エンジンが小さくなったにも関わらず搭載位置が15mm 後退しています。玉突きで座席も後退しているのですが、ペダルの最適化などで スペースを食ったため、座席は35mm後退しています。更にホイールベースがNC型から 20mm減っていますから、この減少分は座席から後輪までの距離が縮んでいるはずです。

つまり、NA〜NC型では旋回時自転の中心に位置していた着座位置が、かなり後ろ側に ズレているのです。このあたりも旋回の印象が大きく違う要因かもしれません。

上記のようパッケージングの考え方が変り座席が後退した分、Aピラーがそのままだと 間抜けなので70mm後退させてキャビンをより後方に位置するように見せています。その分、 フロントノーズがNC型までのようなデザインだと間延びしてしまうので、フロントフェンダーに 沿って大きな抑揚をつけたデザインとしたと見る事ができます。

結果として、NC型までのロードスターと雰囲気がかなり変り、 かなりクラシカルな雰囲気を持ったスポーツカーになりました。 国産車では群を抜いて美しいデザインになったと思います。

ただ、こうして見ていくとデザインありきでなく、 車の機動性や重量配分、エンジンサイズなどからパッケージングが決まっていき、 それらを前提として外観がデザインされたのかなと考えさせられます。

本気にしないでね

念のため、私は文系ですし自動車工学なんてまったくわかりません。 レースをやってるわけでも、公道で激走りしている訳でもありません。

ほぼサンデードライバーの素人です。

書いたことは素人の妄想なので本気にしないでくださいね。

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