石油会社の裏切り(ハイオクガソリン不正)

毎日新聞によって、長年に渡ってハイオクガソリンで不正が行われていたことが6月末に スクープされました。
何が不正だったか?
不正が行われていたのは、シェル以外の系列のガソリンです。 不正の内容は、ハイオクガソリンに関して以下の2点です。
- オクタン価が 100 に達しないのに、オクタン価 100 であるかの表示を行なっていた。 
- エンジン内のカーボンを除去する清浄剤混合を謳っているにも関わらず、添加されていなかった。 
この状態が10年近く続いていたということです。
ご存知の通りガソリンは、「レギュラー」と「ハイオク」の2種類が販売されています。 それぞれ、「レギュラー」はオクタン価が89以上、 「ハイオク」はオクタン価が96以上とJIS規格で規定されています。
「ハイオク」については各社が競ってオクタン価100前後で販売されていると信じられてきましたが、 実際にはオクタン価96以上はあるがオクタン価が100あるかどうか不明ということがわかりました。 キグナス石油やコスモ石油はホームページの商品紹介で虚偽があったことを認め修正を行なっています。
清浄剤については、シェル以外は添加されていないことが判明しています。
例えば、ENEOSはモービルと合併し「ENEOSハイオクガソリン」とブランド名を改めた2018年に 洗浄作用をなくし、汚れ再付着防止作用に切り替えることも告知したらしいのです。 しかし、 HPには未だに「合成 清浄剤 を添加し、カーボンの汚れなどがエンジン吸気系に 付着しづらく なります。」となってます。清浄効果は謳わずでも「清浄剤」という 言葉を紛れ込ませる不誠実な対応ですね。
なぜ、不正が起こったか
思えば90年代くらいは、「どこのスタンドのオクタン価が高い」など結構話題にしていたし 意識して給油していました。この頃は各社もそのブランドの象徴として自社ハイオクの性能を 積極的にアピールしていました。
80年代前半まではガソリンスタンド新店舗が規制されていましたが、規制が撤廃されて恐らく 店舗数が最も増えた時期でした。今から思えばこの時期は既に競争が激化していたのだと思います。
その後、セルフ給油の解禁や車自体の燃費向上、老朽化した地下タンク改修の義務化などもあり、さらに厳しい競争の時代となりました。
石油の元売りメーカーの統廃合も続きました。
そんな中で「バーター取引」が一般的に行われていました。これは2000年以降一般に行われて いたことで、流通過程でガソリンを相互に融通する取引です。
A社の製油所のガソリンをB社のローリー車がB社のスタンドに配送する一方、 逆にB社の製油所にA車のローリーが乗りつけるという物々交換取引や、さらに進んで 共同で油槽所を作り各社で共有するなどが行わられています。
この取引自体は不正でなく、コスト削減と物流の安定化という観点から行われたものです。 資源エネルギー庁の資料や公正取引委員会の資料 [1] なども以前から掲載されています。 このような取引を行うと、結局各社のガソリンが混合されることになるので、独自の機能を 持たせたガソリンなど実現するはずがありませんね。
ちょっと車に詳しい人だと、以前から「レギュラーは各社混合されているから、どこで給油しても 同じ」という形で認識していたと思います。
今回問題は、各社で差別化していたはずの「ハイオク」までこのバーター取引の導入が進んでいた にも関わらず、差別化された商品であるというHPの掲載などを10年近くも続けていたという点が 問題です。
シェルのハイオク Vパワーだけではバーター取引は行なっておらず、専用ローリーを 使用し厳格に扱われているということです。
どうすればいいか?
私自身はたまたま成り行きでシェルを利用していてVパワーを使っているので 特に影響ありません。が、ENEOSやコスモを使っていた方はどうすれば良いでしょう?
国産のハイオク仕様車に乗っていて神経質な方はシェルのVパワーを使いましょう。 国産のハイオク仕様はオクタン価 99以上とされていることが多いためです。
輸入車ユーザーやハイオク仕様でも神経質で無い方は、どこのブランドのハイオクでも 良いと思います。輸入車は オクタン価 95以上の指定が多いですが、「ハイオク」と 名乗っているからにはオクタン価 96以上はありますから。国産のハイオク仕様でも まぁ大丈夫じゃ無いかと思います。
清浄剤に関しては、半年に一度くらい自分で清浄剤を点火すれば良いのではないでしょうか。 私はVパワーを給油していますが、半年に一度 WAKO's のフェール1を添加しています。
| ASIN: | B079Z4HDS5 | 
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脚注