書評 『幼女戦記』
ロリコンもの?
「幼女戦記」
そのタイトルを見て完全にロリコン同人ものだと思っていました。
始めて目にしたのはAudibleでした。シリーズでかなりのタイトルが登録されており、検索すると出てくるので気になっていました。原作の小説についてAmazonのレビューを確認してみると、なかなかに評価が高いではありませんか。
試しに読んでみると、おもしろい!
ディープなマニアックさ
読んでみると、文体も固く一見真っ当な戦記ものです。
兵器や軍隊についてのかなり専門的な用語も多く使われていますし、得に第一次世界大戦、第二次世界大戦前後の歴史に関連した話も多く出てきます。固い印象を与えるのはこういった用語の 印象が大きいかもしれません。
「砲撃観測」、「公算誤差範疇」「兵站司令部」などという言葉がずらりとならんでいるのです。普通の人ならばかなり読むのが苦痛かもしれません。
しかしマニア的には「ほほう!」です。美味しいのです。ごちそうです。
軽薄なようですが、男子なので兵器とか軍とかの描写はたまらないんです。
その実、軽薄なコメディー
一方でコメディ的な要素も満載です。
例えば、簡単にストーリーを紹介すると、
シカゴ学派に狂喜するような人事部のおっさんが事故で死んで気がつくと、 人口増加にも関わらず信仰心が増えないことにキレている神様と対峙しています。 キレている神様(主人公は神など信じていないので、神を詐称する存在Xと認識しています) に「それはビジネスモデルに欠陥があるからだ」と考えてしまいます。当然、神様には 筒抜けなので、ぶち切れた神様に主人公は魔法と戦争の世界に幼女として転生されて しまうというのがプロローグです。
その後幼女にして魔力が認められ軍に入った幼女の主人公は、本音では後方配属で安穏な生活を 願っています。しかし根が「サラリーマン」なのでつい建前で「やる気」を述べていたら、 戦争狂と勘違いされ最前線へと配属されます。
かなり、シニカルですよね。こういったブラックなコメディが至るところで描かれています。
結局ロリコン的な要素はゼロで、戦争、兵器、歴史などディープでマニアックな環境を楽しみつつ、上質でシニカルなコメディーを堪能するという、私の好みにピッタリな本でした。