文賢を使ってみた

カテゴリー:  Tech タグ:  redpen textlint

なぜ推敲支援ツールか

きっかけは同僚がある会社の開発チームの品質改善に取り組んでいて、 私が以前のプロジェクトでRedPenやtextLintを導入していたのを聞きつけて 相談を受けたのがきっかけです。

開発工程では、作成するプログラムに対してコードのスタイルや書き方が コーディング規約に則っているか、一見しておかしなコードになっていないか を検証します。この検証は以前インスペクションと呼ばれ、人がやっていました。 現在は静的テストと呼ばれることが多く、支援するツールが多くあります。

しかし日本語の文章で記述する要件定義書などは多くのプロジェクトで 今でも人が読んでチェックしているのが現状です。スタイルや表現の統一などツールで できることも多くありますが、ほとんどのプロジェクトでツールを導入していません。

導入されないのは、多くのエンジニアがツールの存在を知らないことと、そもそも エンジニアが日本語文章で検証の必要性をあまり認識していないことが理由です。

ところが多くのプロジェクトで重大なバグの混入は要件定義工程で混入していると言われ、 この工程の品質をあげることはプロジェクト全体の品質向上にも繋がります。 ならばツールでできるような検証は、積極的にツールを導入すべきだと私は思っています。

実際にはエンジニアが必要性を認識したとしても、以下のような理由で導入には困難を伴います。

  • プロジェクトの文書フォーマットが、WordやExcelでツールの適用が困難です。 特に今でもバカみたいに方眼紙Excelを使っている企業は多く、こういったツールの 導入を阻む要因になっています。

  • 上記のフォーマットをサポートするツールはジャストシステムの有償のJustRight くらいしかないが、多くのプロジェクトではこのような有償ツール購入のコスト が積まれていない

実際にアドバイスした同僚も、フォーマットの問題でオープンソースのRedpenなどは 対応できず、有償ツールはコストの問題で導入には至りませんでした。

そんな検討を手伝っていた時に、見つけたのが文賢です。

文賢とは

文賢 とは、Webベースの推敲校閲支援ツールです。

Redpenやtextlintより突っ込んだ校正・推敲支援機能を持っており、 文章表現支援や具体的な文章に関するアドバイスなどより総合的に執筆を支援してくれます。

開発元の株式会社ウェブライダーは、Webマーケティング支援やコンテンツ制作を 行なっている京都の会社でWebライターの世界では有名らしいです。 代表の松尾茂起さんの著作である「沈黙のWebマーケティング」「沈黙のWebライティング」 などもその筋では売れているとのことです。

文賢の使い勝手

校正機能

校正機能では以下のようなチェックを行ってくれます。

  • 誤字脱字

  • 誤った言葉

  • 誤った敬語

  • 気をつけるべき商標と固有名詞

  • 誤用しやすい言葉

  • 話し言葉・砕けた表現

  • 重複表現

  • 半角カタカナ

  • 機種依存文字

  • 差別語・不快語

  • ポリティカル・コレクトネス

多くはRedPenなどでもチェックしてくれますが、「気をつけるべき商標と固有名詞」 などは文賢のチェックの方が厳格です。 たとえば「宅急便」という言葉やヤマト運輸の商標なので「宅配便」という言葉を推奨してくれます。

また「ポリティカル・コレクトネス」という機能もRedPenにはなかった機能です。 差別語などと区別がはっきりあるわけではないようですが、 政治的・社会的に中立公正で、なおかつ差別・偏見が含まない表現です。 たとえば「看護婦」という言葉は女性を前提にした言葉なので「看護師」を使えと推奨してくれます。

これらのチェックはリアルタイムにチェックしてくれるので、書いている時にすぐに気づいて表現を修正できるので非常に便利です。

推敲機能

文賢では、以下のような推敲機能をサポートしています。

  • ユーザー辞書

  • 接続詞のハイライト

  • 同じ助詞の連続使用

  • 同じ文末表現の連続使用

  • 二重否定表現

  • 一文に読点が4つ以上ある

  • 50文字以上の文に読点がない

  • 漢字で書くほうがよい言葉

  • ひらがなで書くほうがよい言葉

  • カタカナで書くほうがよい言葉

  • 句点や記号のあとに改行がない

  • 句点や記号以外で改行している

  • 記号が全角に統一されていない

  • 英数字が半角に統一されていない

多くの検証項目はRedpenなどでもサポートしている機能です。語句ごとに漢字、カタカナ、ひらがなのどれで書くべきかとの示唆は文賢にしかない機能です。

同じ表現の連続や接続詞のハイライトなど気づかずにやっていることが多いので、こレラのチェックをリアルタイムでやってくれるのは非常に助かります。

文章表現

文章表現はATOKなどでも提供されている類似の表現を提示してくれる機能です。

たとえば「美味しい」と書きたいが、少し表現を捻りたいと思った場合文章表現で「美味しい」と検索すると、「脂の乗り具合がいい」とか「箸が止まらない」とかいった表現を提示してくれます。

人によっては便利かもしれませんが、今の所私は使用したことがないです。

アドバイス

文章の改善アドバイスを何項目か提示してくれます。

書いた文章の直接の指摘でなくアドバイスです。たとえば「長い修飾語や大きい状況を示す言葉ほど先に置いていますか」などのアドバイスが表示されますが、必ずしも該当するアドバイスに該当する文章があるから表示されているわけではありません。アドバイスが該当するかどうかはあくまで自分で確認しなければなりません。

提示されるアドバイスは「なるほど」というものばかりで「炎上リスクはありませんか?」など現代のSNS時代に即したものもあり確認する価値はあります。

購入する価値はあるか

使用した感想は、RedPenやtextLintなどと校正・推敲支援機能自体はそれほど違わないと思いました。もちろん、最新の表現やルールが反映されているメリットはあると思います。

リアルタイムでチェックが働く点は非常に便利な機能ですが、RedPenなどでもVimでリアルタイム検証の環境を私は整えているので、個人的にはそれほど大きなアドバンテージには感じません。

したがって入会金10,800円、月額1,980円は見合わないと思いました。文賢はトライアル版もないので、これだけの利用料をユーザーに課するサービスであればトライアル版を用意すべきかなと思います。

RedPenやtextLintの環境を設定できない方で文章を書く機会が多い方で、あれこれツールに手間をかけるより金で解決したいというのであればよいツールです。

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