エコタイヤはスポーツタイヤに勝るか
文化の日に、雑誌「ベストカー」の企画でツインリングもてぎで開催された「体感試乗会 #スバコミ & YOKOHAMA」に行ってきました。そこで、エコタイヤとスポーツタイヤの乗り比べができたので、まとめてみました。
エコタイヤとは
まず、比べる前にエコタイヤと何かを確認しておきましょう。
エコタイヤは低燃費タイヤとも言われますが、燃費向上に貢献するため転がり抵抗を低くした転がりやすくしたタイヤです。
転がり抵抗は、荷重と転がり抵抗係数の積算ですから際には車の重さに影響されます。しかし同じ車であれば転がり抵抗は、転がり抵抗係数に左右されることになます。ちなみに鉄道のレールの転がり係数は0.2 - 1、自転車が2.2 - 5 (50Km走行時)です。舗装路での自動車タイヤの転がり抵抗は10 - 15ですから、自動車タイヤってそもそも圧倒的に転がりにくいのです。
では、転がり抵抗係数に影響するタイヤの要素とはなんでしょう?
大半は、ヒステリシス・ロスと呼ばれるゴムの変形によるエネルギー損失です。これは荷重などによりゴムが変形し元に戻ろうとする力で発生するものです。次に接地摩擦と空気抵抗です。
結局エコタイヤとは何かというと、タイヤ自体のたわみを抑えたりトレッドパターンを工夫したり重量を軽減したりといろんな工夫された要素はありますが、突き詰めるとこのヒステリシス・ロスをある程度小さくしたタイヤです。
ところが、このヒステリアシス・ロスは、タイヤのグリップ力の源泉でもあります。単純に低めてしまうとグリップ力の弱いタイヤになってしまいます。このトレードオフをどうバランスさせているかが、それぞれのメーカーやタイヤの種類による特徴となります。
タイヤの比較方法
今回は、同じ車種でグレードやブランドが違うタイヤを乗り比べて、体感により違いを感じるという方法でした。車種はレヴォーグとWRX S4でした。
タイヤは、横浜タイヤのADVANとECOSです。
コースは、停止状態から急加速し、ブレーキング後比較的ゆるいカーブを周りドライとウェットのシケインを通り、さらに再加速してブレーキングで急停止、また発進して戻るというの500mくらいのコースでした。
エコタイヤはスポーツタイヤに勝るのか
エコタイヤはかなり良くなっていると聞いていたので、かなり期待して乗りました。街中では究極的なグリップが必要なシーンなどほとんどないので、性能的に問題ないなら価格も安くしかも燃費にも貢献できるエコタイヤでいいんでないかと思ったからです。
実際にエコタイヤで走ってみると、
- 加速ではそれほど違いを感じない
- ゆるいカーブでは少しスピードに乗っていたこともあり、エコタイヤではアンダーステアが出てしまう。また、剛性感が足りず、タイヤのたわみのようなものを感じる。
- シケインではさらにアンダーステアが強くなり、ウェットのシケインではさらにその傾向が強くなり狙った出口を向きを変えるのに時間がかかる。当然、アクセルは踏めない。
- 制動時には、予測より速度が落ちずブレーキの踏み増しが必要となる
そのあと、ADVANに乗った印象は、
- 加速でグリップが強いという感覚はないが、剛性感があるような気がする
- ゆるいカーブでは、狙ったラインをきれいにトレースでき安心感がある
- シケインでは踏ん張りが効いて、ウェットでも安心してパーシャルでアクセルを徐々に開けることができる。アンダーもほとんど出ない
- 制動時は自分の予測通りの距離で止まる
こう書くと、エコタイヤが全然ダメのようですが、普段使ってるタイヤとのギャップ での感じ方だと思います。 うちのクルマが履いているDunlopのSports Maxx というタイヤは「ハイパフォーマンスタイヤ」 と呼ばれるもので、それが私の基準になってしまっているため、エコタイヤでは頼りなく 感じたのだと思います。
多分普通の使用ではエコタイヤでも全く問題ないレベルです。
スピードも街乗りよりもう一段くらいアクセルを開いた状態ですから、 日常的にエコタイヤだとアンダーステアになるというのではありません。
どちらを選ぶべきか
わたしはやはりエコタイヤと称されているものより、ハイグリップタイヤやスポーツタイヤの方が安心です。
街中では今回の乗り比べでの運転のようなシーンが頻繁にあるわけではありませんが、 それでも首都高での曲がりくねった箇所や合流地点、 たまに行く山道でのプラインドコーナーなど、スポーツタイヤの方余裕があり相当に安心です。
今回驚いたのはクローズドなコースで多少スピードはのっていたとはいえ、 500m程度の小さなコースでのスピードです。これで感覚的にココまで違うというのに 驚きました。 レヴォーグやWRXなどの車種であれば、迷わず純正で履いているレベルのスポーツタイヤを選んだ方が良いと思います。
一方でエコタイヤは思ったよりグリップが悪いわけでなく、まぁ普通のレベル。乗り心地は思いの外硬いものでしたが、ロードノイズはかなり低減されます。ミニバンやコンパクトカーならこれで十分と思えました。
最後に、プロのドライバーの運転でADVAN FLEVAに乗せてもらいました。
フラッグシップのADVANから少しエコに振ったタイヤとのことでしたが、通常速度での乗り心地もよくロードノイズも良く抑えられています。一方でシケインや急なレーンチェンジでも破綻することなく、粘り強いグリップ力を見せます。
街乗りにはこれくらいがよさそうです。
エコタイヤの経済メリット
さて、エコタイヤとは燃費向上に貢献するため転がり抵抗を低くした転がりやすくしたタイヤと書いたように、その目指すところは経済的なメリットです。「タイヤのパフォーマンスに多少難があってもしっかり経済的なメリットが得られるのであればよい」という考え方もあってよいでしょう。
では、どれくらいの経済メリットなのでしょうか?
我が家は週末し乗ることがない都市部では典型的な自動車の使い方をしていると思います。年間のガソリン代はざっくり12万円程度です。
各社のエコタイヤの燃費向上度合いを見てみると、大体5%前後が上限のようです。これはJAFMateの実験結果とも一致します。実際にはストップ&ゴーが多い公道ではこれよりかなり悪化すると思いますが、一旦この5%の効果があると過程します。
年間節約金額 = 年間ガソリン代(12万円) x 燃費向上率 (5%) = 6,000円
うちのクルマの燃費は7Km/Lとかなり悪いほうなので、燃費向上率の金額へのはね方は大きいはずですが、それでも年間6千円です。
人によって感じ方は違うかもしれませんが、個人的には犠牲になるものを考えるととても見合う削減金額ではありません。
乗り比べの際、グリップ力の他にタイヤの剛性感不足など本来エコタイヤで工夫されているトレッド面以外の物足りなさを感じました。まさにこの程度の経済効果では、タイヤへのお金の掛け方も限られてくるわけです。
イベントについて
今回、雑誌ベストカーが主催で、スバルとヨコハマタイヤが協賛という形で有料イベントを組んだ最初の会だそうです。
イベント自体は、ゲームやプロドライバー(新井選手と荒選手)のデモ走行もあり、スバルのラインナップの車種、特に新型インプレッサもあり楽しいものでした。特に、タイヤの乗り比べなんてなかなかできる機会がないので、貴重な体験でした。
一方で不満もあります。
- 全体に待ち時間がなく、何かをやってる時間は拘束時間の20%にも満たない。運営方法やイベントをもう少しなんとかできたんじゃないか。
- 場所が遠い。結局サーキット行っても会場は駐車場を仕切ってやってるだけ。都内の駐車場とかでいいんじゃないのか
- 今回同伴者1名で9,000円は高い。車やタイヤはスバルやヨコハマタイヤのマーティング費用で賄われているだろうから、一体なんの費用やら。
- 同伴者は乗車できず、やることがない。あれなら、同伴者はなしとした方がスッキリする。
個人的には、妙な勝ち抜きゲームをやるより、貴重なマーケティング情報が得られるオタクどもによる新型インプレッサの試乗とインプレッション・ディスカッションなんて企画をやるべきだったと思います。