読了『僕だけがいない街 Another Record』 :人は描かれていないものは理解しない

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『僕だけがいない街 Another Record』を読んでみました。

アニメ放映も終わり、原作の方も最終巻を待つばかりの今「僕だけがいない街」ロスになっていたので大変楽しめました。

以下はなるべく気をつけましたが、ネタバレです。

あらすじ

あらすじを書くのは嫌いなのですが、後の感想が分からないのでものすごくざっくり書いています。

この小説は『僕だけがいない街』本編の後、ケンヤが最高裁での八代学の国選弁護人となるところから始まります。

物語は、逮捕前に書かれた八代学の手記とそれを読み解くケンヤの述懐からなります。八代の手記は本編でも描かれていた最初の殺人から遡って記述されています。従って、時間的には本編後の物語ですが、読者は本編のストーリーを別の視点で再度振り返る事となります。

絶対悪である八代を弁護する事に悩むケンヤは、手記を読み解く内に一連の事件の裏にある仮説にたどり着きます。そして、同じ仮説に至った八代が手記を記した意味を理解し、自分の弁護人たる使命は「弁護人の望みをすくい上げることだ」と改めて思い至ります。

そして、最高裁での判決で物語は完結します。

この小説の醍醐味

この小説は面白いです。

なぜなら、八代学の手記と言う形を借りて『僕だけがいない街』を再体験できるからです。

単行本の最終巻こそまだ発売されていませんが、本編連載も完結しています。アニメも1クールで最終話に至り放映も終了しています。

そう、我々は『僕だけがいない街』だけがいない街に生きていかねばならない……。簡単に言うと『僕だけがいない街』ロスなんです。

そこにこの小説の登場です。あの物語を追体験させてくれるだけでもありがたいのです。しかも、単なるノベライズでなく文字通り別の記録(Another Recird)として読ませてくれるのです。

楽しめない訳がない。

私がたどり着いた結論は「人は書かれていないものに感動しない」

さて、本編『僕だけがいない街』を振り返ると、確かに緻密な伏線や意外な展開があり久々に読ませてくれる漫画でした。

この小説を読んで改めて思った事は、本編が終始主人公目線で書かれていたらここまで感動を呼ぶ漫画にはならなかったであろうと言う事です。

本編では途中でケンヤが小学生とは思えない洞察力で主人公藤沼悟の変化に気づきます。階段での会話以来、ケンヤは悟の行動を賞賛し常にそのサポートを行います。

そう、私たちは悟の行動やその勇気をケンヤの口で語られるによって初めてその意味に思い至り感動したのです。

この小説では、藤沼悟の行動に何を感じその意味は何であったかが ケンヤと八代学の視点で再構成されていきます。

その過程で、改めて他の選択肢がなかったとは言え悟の意思とその勇気、偉大さを知ります。それは殺人者である八代学の使命をも上回り、八代学と言う人間を変える程の重みを持って証明されます。

描かれている事件や事実は変わりありません。こうしてその意味を明確な形で証明し突きつけられて、初めてその意味を理解し感動すると言う意味では、私たちはまだまだ八代学やケンヤに及んでいないのだと思い知らされます。

情けなや orz

関連リンク

-アニメ版「僕だけがいない街」考察

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