間違えて IBMに入社して退職した人の記事を読んで

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日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、IBM)に入社して10ヶ月で退職した若者のブログ記事を見つけました。

今のご時世をなんとなく反映しているのか、象徴的な記事だなと思いました。

退職までの顛末

問題の記事は、「間違えて大企業入っちゃったので10ヶ月で辞めました。IBM月速退職記。」です。

この方、『たまご戦争』なるアニメーション製作のための仲間づくりために就活を始めます。

当初はベンチャー企業のクリエイティブなデザイナー職を受けていたようです。しかし、うまくいかずそのうちにプログラマーなども受けていたようです。

その後、大手企業も受け続け最終的にIBMに就職が決まったようです。

世界のITカンパニー! ひゃっほぃ! IBMは社内にLGBTグループがある!
先進的! 初任給28万ひゃっほい!
金貯めてとっととアニメーションスタジオ作るべ!
IBMは週休3日制がある。
これでSEとアニメーションを両立だ!
経歴がIBM Japanなら海外で何かを始めようとした時も栄えるだろう!

間違えて大企業入っちゃったので10ヶ月で辞めました。IBM月速退職記。 - かずかずのたまご

まぁ、こんなことが通るわけはなく、その後自分の思いと会社の実態のギャップに悩み始めます。

IT分野でやりたかったこと現職の断絶、現職と研修内容の断絶と、ニ重に断然があり、今自分がここ(オフィス)に居る理由が全く感じられませんでした。

間違えて大企業入っちゃったので10ヶ月で辞めました。IBM月速退職記。 - かずかずのたまご

そして、ついに退職に至ったとのこと。

今後の彼の本当の自分の道が見つかり、成功されることをお祈りしています。

思ったこと

この記事を読んで思ったことは、2つあります。

  1. なんでこの企業はこの人を採用しちゃったんだろう
  2. やっぱり日本ではIT企業を育てる土壌がないんでは?

まず、採用についてです。
現在企業も優秀な新入社員を集めるのが大変です。つい本人の志望とかを軽視して、見た目の経歴だけで採用を決めるケースも多いと言います。

この方の場合、面接でどんな対応をしていたかわかりませんが、経歴を見ればITとは程遠くエンジニアを志望されている様子はみうけられない。そんな人材をなぜエンジニアとして採用するのでしょう。

「留学→語学」、「アニメーション→ITできるじゃん」などという無責任な判定がされるシーンが思う浮かびます。大体プログラミングもできない層の人が面接するケースが多いようですから、知識不足で動画見せられたら「すごい」とか思っちゃうのでしょうか。

採用された方、採用した方も不幸です。

そして、やはり日本のIT企業の採用についてです。

IT企業で実践されるのは、単純なプログラミングではなくソフトウェア工学に基づいた開発です。

日本の大学では、プログラミングは教えるがソフトウェア工学を教えないところがほとんどです。千葉工業大学のプロジェクトマネジメント学科や南山大学のソフトウェア工学科など例外はありますが、ソフトウェア工学を専門的に教えるところは皆無です。

企業では、仕方がないので、プログラミングから始めて研修を繰り返し、「ソフトウェア工学」を教えるのは時間がかかるのでお決まりのソフトウェア開発工程を「標準」と称して教え込む程度の場合がほとんどです。また、大きな企業ほど労働単価が高く、大量の人が必要なプログラミングなどは外注するので、ソフトウェアを書く機会が与えられない場合がほとんどです。

これでは、この方のように先が見えずやる気がなくなって辞めていくか、意味のないお絵描きを仕事にする人として会社に残るかしかありません。

困ったものです。

藤井太洋さんの「ビッグデータ・コネクト (文春文庫)」に描かれた、SIerの世界って結構現実に忠実な気がします、残念ながら。

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