読了『天使のナイフ』
初めての作家さんでしたが、江戸川乱歩賞受賞ということで期待して読みました。
テーマは未成年の犯罪という結構重たいテーマです。 大人の犯罪者と違って犯罪を犯した未成年は更生を目的として、保護されています。具体的には前科とはならないし、名前も公表されません。更生施設で何年か過ごせば社会復帰の機会もあります。
より厳罰を与えるべきという「厳罰主義」と、更生の可能性を信じて保護すべきという「保護主義」とでよくテレビなどでも意見が対立しています。この小説では、加害者、被害者それぞれの側からの見方が描かれています。個人的には「保護主義」を叫ぶ人の論理はよくわかりませんが、主人公の言葉として語られる心情の変化はよくわかりました。
この未成年犯罪についての制度が一つの因果となって、一連の事件が起こっており読者はミステリー感覚でその因果を一つ一つ主人公と辿っていくことになります。中盤から誰が犯人か読者を悩ませつつ展開を早めて一気に読ませます。
ちょっと、強引で出来すぎた話感はありますし、ミステリーとして読む反則技的なところもありますが、いろいろ考えさせてくれる面もありつつしっかりとエンターテイメントしているのでオススメです。