コンピューター夜話 : 出会い以前
ちょっと気が向いたので、自分とコンピューターとの話を書いてみる。まずは、子どもの頃の話。
1960年代生まれの僕にとって、子供の頃コンピューターは全然身近な存在じゃなかった。
1969年に月に人類が到達したと言っても、当時の僕にはコンピューターと言ったら、ウルトラマンの科学特捜隊やウルトラセブンの地球防衛軍の秘密基地の指令本部で動いているものだった。時々、なにやら複雑な計算をして、穴の空いた紙テープで結果をだーっと吐き出してくれる。物語の上それっぽく未来的な感じを出すための道具でしかなくて、子供としてもあまり注目していなかった。
それが一気に「コンピューター、すげーっ」ってなったのは、1971年に放映が始まった「バビル2世」からだ。
5000年前に不時着した異星人のコンピューターがずっと働き続け、ついにその子孫である主人公をコンピューターが見つけて主人として迎えるという話だ。主人公が超能力者ってのもカッコ良かったけれど、砂漠の中に眠る遺跡バベルの塔に、世界最高の性能を秘めた超高性能コンピューターが稼働してるってのが飛び抜けてクールだった。しかも、このコンピューターは人の言葉を解して人の言葉をしゃべった。質問すればなんでも答えてくれるし、白い紙テープなんか吐き出さない。
あれが子供ながらに「コンピューター」というものに興味を持って、憧れた最初の時期だと思う。ただ、あまりに凄すぎて、本当にこんなコンピューターができるのは遠い未来のことだと漠然と思っていたな。
漫画の原作も揃えて今でも持っているけれど、コンピューターの説明をバビル2世はこんな風に言ってるシーンがある。 「アメリカ宇宙局のコンピューターの百億倍の働きをします」 これってどれくらいだ? 当時のNASAのコンピューターがなんだからわからないが、1971年当時で最新のスーパーコンピューターというとILLIAC IV。イリノイ大学が開発したスカラー型コンピューターで256個のプロセッサーを並行稼働させたものだったらしい。処理速度は 150M FLOPS。
僕が今仕事で使っているMacbook Proはi7で50G FLOPSくらいは出てるだろうから、ノートPCでも当時のスーパーコンピューターの性能は軽く超えている。これはもしかして、もうバベルの塔のコンピューターなんて大したことなんじゃないかと疑った。
だけど、1ILLIAC IVの100億倍の働きだとすると、バベルの塔のコンピューターは1500P FLOPSだ。やっぱり、Macbook Proごときが挑戦する相手ではなかった。
では今世界一速いスーパーコンピューターといえば、天河2号。34 P FLOPSくらいだ。やっと、ペタに届いたけれど、まだまだ性能的にはかなわない。
やっぱり、まだまだ、バベルの塔って凄いんだな。