残穢
小野不由美の9年ぶりの書き下ろし、 『 残穢 』を読みました。
『屍鬼』から気になっている作家ですが、 娘が読んでいる『十二国記』は実はあまり得意ではありません。 今回はタイトルからしてホラーものなのでかなり期待して読んでみました。
内容的には、怪談収集している作家がたまたまある怪談を調べてみると、 次々と別の怪談と事実と繋がっていき、最後は大元となった怪異と背後にある事実が 浮かび上がってくると内容。
実は怪異はすべて収集した怪談など伝聞の形で登場します。 そして、最後にいたるまで怪異や幽霊など恐ろしいものが登場することもありません。 ところが、物語は主人公がホーラー作家ということ、そして現実離れした怪異が 直接登場しないことで、物語は作者の実体験でノンフィクションを読んでいる感覚になってきます。
そうすると、怖いのです。
全体がノンフィクションということは、 伝聞の形で登場する怪談も少なくとも語り部たちにとっては「ノンフィクション」だからです。
そして、最後は一連の怪異の連鎖のキーとなるある事実にたどり着くのですが、 それは限られた事実ですべてが判明した訳でもなく解決した訳でもありません。 けれど、そこで終わります。なんだか釈然としませんが、終わってしまうのです。
主人公のような作家の怪談についての調査とはそんなものなんだろうなと思います。 もう、ここで完全にノンフィクションを読んだ気持ちになってしまっています。 あとがきも解説もなく、これがノンフィクションなのかフィクションなのかわからないまま 読み終わります。
釈然としませんが、怖いです。