読了『小保方晴子日記』
STAP騒動から 4年近く経とうとしていますが、渦中の人であった小保方晴子氏の 日記が出版されたので読んで見ました。
内容について
騒動の 2年後に出版された『あの日』も読んでいたので、 「あれからあの人はどうなっているんだろう」という興味から出版後すぐに 読み始めました。
内容は『婦人公論』に連載されていた当時の日記に加筆して単行本にしたとの ことです。「その後」を期待して読み始めたのですが、2014年末2016年10月 までの日記でちょっと期待と違いました。唯一最後に2018年2月23日として あとがきで撮影の様子などが書かれています。
期待とはちょっと違いましたが、この期間に著者に起こったことを読んでいくと 内容的にはかなり濃厚です。理研からの退職に始まり、理研からの論文費用の 返還要求、告発、博士号の取り消し、手記の出版、NHKの放送内容に対するBPOへの訴え などかなりヘビーです。また、その期間、著者はうつ病を発症しており その様子も克明に書かれています。
日記を読む価値があるか
最初は「いくら騒動の渦中の人が書いたからといって、日記を読む価値があるのか?」 と思いました。しかし、読んでみると、著者の立場で主観的ではありますが、以下の ことを考えさせられます。
理研がNatureへの論文関連費用の変換を著者個人に求めているが、通常の 会社組織では考えられない。おかしいのではないか?
STAP細胞の是非はともかく直接は関係ない著者の博士号を早稲田大学による剥奪 は合理性があったのか?
本書を読む限り、早稲田による博士号剥奪は文科省の圧力があったとのこと。 本当であれば、財務省の問題と同じレベルで問題ではないのか?
マスメディアによる個人攻撃
自身に起こったこととして短い文章で淡々と書かれており、批判や告発ではなく 感じたことがそのまま書かれていることが逆に読んでいて考えさせられました。
振り返ると、早々にSTAP細胞はES細胞由来と結論した桂勲調査委員会、短期間で「STAP論文に 研究不正がある」と結論づけた石川調査委員会をはじめ、文科省、理研、大学 は意図してかどうか別にしてあるストーリーに沿った幕引きをしたかったのでは? と疑いたくなりました。
何年か後にこの幕引きで用意された「STAP細胞はない」という結論と異なる 結論が実証されたりしたらと思うとゾッとします。 匿名Aによる論文大量不正疑義事件 の事件の顛末を見てると、著者のキャラクターで大騒動になりましたが、学会や 研究機関がもっと深刻な問題を抱えていることがわかります。
そしてそのわかりやすいストーリーに乗って踊ったバカなメディアが騒いでいた のが当時の騒動だったのかと思います。こういう事件が起こるたびに、マスメディアは 個人攻撃に走ります。松本サリン事件から何も変わっていないことに驚きますが、 著者を支えるのも講談社や中央公論社といったメディアであることは皮肉な 現実です。
うつの症状はその対処も克明に書かれているので、そういうケーススタディとして 読んでみるのも良いかもしれません。
日記の中では、著者は小説の執筆にチャレンジしています。ありかもしれませんね。